かにかに、こそこそ (おはなしのろうそく17より)
あらすじ
じいさまが、川の中にいたかわいらしいかにを飼おうと、うちに持って帰ってきたのですが、ばあさまはそのかにを食べると言います。そこでじいさまは井戸の中にかにをかくまい、こっそり世話をしていました。合言葉は「かにかに こそこそ じさ来たぞ」。
しかし、ばあさまはじいさまが留守のあいだに、かにを煮て食ってしまいました。じいさまに怒られてぶったたかれて、もうしわけないとばあさまは体を縮めているうち、だんだん小さくなって、しまいには沢がにになってしまいました。
だから、川のかには大きくなるけれど、沢がにはいくらたっても大きくならない、というお話。
約7分。
読み聞かせのコツ①じいさまとばあさまの性格分け
単純明快な「善と悪」で、子どもにもわかりやすいベタな昔話だと思います。
「ばあさん、ばあさん、山へいったら、川の中にこんなかわいらしいかにがいたから、つかまえてきた。うちには子どももいないし、大事に飼ってやろうや」
このセリフを、じいさまなどんな顔で言っているか想像してみてください。ニコニコ、満面の笑顔ではないでしょうか?なので読むときも、「満面の笑顔」で言ってみましょう。
対照的にばあさまのセリフをとことん意地悪な口調で表現すると、二人の性格の差が際立ちます。
「ほう、じいさん、こりゃ肉がついてうまそうなかにだね。煮て食ったら、さぞかしうまかろう」
このセリフだけピックアップすると、ばあさまが素直に「わあ♡食べたーい」と言っているようにも受け取れますね。まあそういう読み方もあるかも知れませんが、ここはくっきり、性格の悪そうなばあさま口調でやってみたほうが、聴き手にはわかりやすいでしょう。難しくて意地悪く読めな~い、という場合は、ちょっと口をゆがめながら読んだりしてみてください。(笑)
読み聞かせのコツ②「かにかに、こそこそ」
ばあさまに食われまいと、井戸にかにをかくまうとじいさまはかにに言い聞かせます。
「かに、かに、いいか。ばあさまが来て呼んでも出てくるな。食われてしまうから。おれがな、『かにかに、こそこそ、じさ来たぞ』といったら、出てこい。そうしたら、おれがうまいもん食わしてやるからな」
この「かにかに、こそこそ、じさ来たぞ」がポイント!
さあ、どうやって読みましょう?
スルっと読んでしまってはいけません。タイトルにもなっている大事なところです。子どもたちの心をグッとひきつけるセリフにしましょう。
コレだ!という正解はありませんが、ひとつ言えることは、これは深い井戸に潜んでいるかにへの呼びかけです。だから、呼びかけかたでその距離感を出しましょう。でもふか〜い所にいるから、といって大きな声をだしたら、ばあさまに気付かれてしまいますよね。小さな声で、遠くにいるかにに声をかけましょう。
読み聞かせのコツ③もざん もざん もざらん
じいさまが呼びかけると、かにが井戸の深いところから
もざんもざん、もざらん
とあがってきます。
かには「五升なべのふた」くらいに大きく育ちます。
五升…?一升は1.8リットルですから五升はその5倍で9リットル…の…鍋の、ふた…。とにかく、大きいのですね。
もざん、もざらん、でかにの大きさとゆっくり登ってくるさまを表現しましょう。子どもたちも面白がって言いたくなってしまうフレーズですね。
読み聞かせのコツ④食われてしまった…
じいさまがかにを飼っているのを発見してしまったばあさまは、じいさまが山に行っている間に、「かにかに、こそこそ、じさ来たぞ」と、かにを呼び出すことに成功します。
でっかいかにが、じいさまだと思って、もざんもざんとあがってきました。
ばあさまは、それを見るが早いか、かにをふっつかまえて、大なべいっぱいに、ぐわらぐわらと煮て、みんな食べてしまいました。
あーあ…と、ショックなシーンですね。読み手も「やれやれ、困ったばあさんですよねぇ」といったニュアンスを含んで読んでもOKです。
読み聞かせのコツ⑤からすの密告。
じいさまが山から帰り「じさ来たぞ」と呼びましたが、かにはあがってきません。
そこへ、からすが一羽、ぱあっと飛んできて、まえの柿の木にちょんととまって、
「じさ、じさ、山から来やあったか。
かにの身は、ばさの腹ん中。
甲らは、流しの縁の下。ガア、フン」
と、鳴いたっていうんですね。
いきなり喋るからすが現れます!「来やあったか」なんてちょっといいにくいですが、からすっぽく読んでみましょう。
最後の「フン」てのはなんなんでしょうね(笑)お笑い芸人さんがギャグで言いそうですよね。あまり悩まないで読んでみましょう。
読み聞かせのコツ⑥ばあさま、沢がにになる。
じいさまが、ゆでられて真っ赤になったかにの甲らとあしを発見し、それらを焼いて灰を埋めお墓を作ってあげます。
お墓を作って弔う…ここは優しいシーン。ざっと読んでしまわないで丁寧に読みましょう。ショックを受けた聴き手もかにが手厚く葬られて、少し癒されるでしょう。
そしてその残った灰を撒くとつつじの木に黄金の花が咲きます。しかし、ばあさまがまねして同じように撒いても、がらくたがぶらさがるだけ。
ばあさまは、じいさまに怒られて、ぶったたかれて、もうしわけないというので、体を縮めているうち、だんだん、だんだん小さくなって、しまいに、沢がにになってしまいました。だから、川のかには大きくなるけれども、沢がには、いくらたっても大きくならないのだ、ということです。 いきがポーンとさけた。
最後の、「だから、川のかには大きくなるけれどもー」のところからは、聴き手がかにの姿をイメージしやすいように、ゆっくり読みましょう。読み手もちゃんとかにの大きさなどを頭の中で描けていることが肝心です。
「いきがポーンとさけた。」で、「ハイ、おし~まい…!」と、気持ちをそっと置いてシメましょう!
個人的感想
おはなしのろうそくは、「語り」の分野でもあります。本をそのまま読んでもよいのですが、せっかくなら暗誦して、身振り手振りを交えておはなしするのはどうでしょう。「かにかに、こそこそ」で、手でかにがこそこそ動くさまを表現したいですよね♪
小学校で聴かせたことがあるのですが、そのときは「もざんもざん」を気に入って貰えたようでした。
絵本を読み聞かせることが多いと思いますが、たまには「語り」にも挑戦してみてください。きっと子どもたちにもウケると思います。
※「おはなしのろうそく」各巻は手に入りにくいので、わたしは本屋さんで注文して取りよせてもらいました。
↓かわいい子どもたちを守りましょう!戦争反対っ!
↓押していただけると励みになります🙇