ないた赤おに 浜田廣介(ひろすけ)・作 いもとようこ・絵
あらすじ
やさしい赤おには、人間と仲良くしたいと思っていました。立てふだを立てて心やさしいおにです、とアピールをするものの、簡単には信用されません。
そこへ、仲間の青おにがやってきて、自分が村をおそうから、そこをおさえて頭をポカポカなぐれ、そうすれば、人間たちは赤おにをほめたて、安心するだろう、と企てます。その企画は見事成功。人間たちは赤おにを慕うようになります。
しかし、それ以後姿が見えない青おにを心配して訪ねると、青おには赤おにに気遣って「長い旅に出る」との張り紙が。赤おには、何度もそれを読み、涙を流して泣きました。
約23分。
読み聞かせのコツ①冒頭はやさしく入ります。
赤おには、やさしい鬼です。人間たちの仲間になって仲良く暮らしたいと思っています。なので、おはなしの冒頭から、やさしい雰囲気で読みましょう。暗くならないように。
読み聞かせのコツ②ワクワクする赤おに。
人間とお近づきになりたいがために、人間あてに誘い文句を書いた立て札を設置。
ココロノ ヤサシイ オニノ ウチデス。
ドナタデモ オイデ クダサイ。
オイシイ オカシガ ゴザイマス。
オチャモ ワカシテ ゴザイマス。
赤おには、期待と希望のワクワクした気持ちでしょうね。
読み手は、のちのちのお話の結末が切ないものであるとわかってしまっているので、どこか全体的にしんみりと読みたくなってしまいがち。
でもここは、「赤おにの楽しい計画」に重点を置いて、わくわく感を出しましょう。
読み聞かせのコツ③でもやっぱ、おにだもの…
立て札を読んだ二人のきこりが、おにの家の中の様子を伺います。
「なんだか、ひっそりしているよ。」
「きみが、わるいな。」
「さては、だまして、とって食うつもりじゃないかな。」
「なあるほど。あぶない、あぶない。」
きこりサイドにしてみれば、相手は鬼なのです。そう簡単には入る勇気は確かに出ませんよね?
おそるおそる、そしてひそひそと声をおとして、きこりの緊張感を出しましょう。
読み聞かせのコツ④キーパーソンの青おに登場!
人間たちに理解されず、ヤケになってしまった赤おに。
そこへ、たまたま青おにが訪ねてきます。
赤おにの悩みを知った青おには、
「ぼくが村を襲うから、きみがぼくをなぐれ」
と、ひと芝居打つことを提案します。青おにも、また優しいキャラクターなのです。でも、赤おにと同じようなトーンにならないように、ハッキリ分けて演じてみましょう。青おにのほうが、どことなくあっけらかんとして、明るい性格のようですね。そしていわゆる「いいヤツ」。しっかりイメージを描いてみましょう。
読み聞かせのコツ⑤赤おにのお芝居は棒読みで。
計画どおりに、青おには村を襲います。お芝居のわりには、けっこう暴れます(笑)
そこへ、赤おにが、これもまた筋書きどおりに止めに入るのですが…
「どこだ、どこだ、らんぼうものめ。」
この赤おにのセリフを、いかにもお芝居です、という感じになるように、棒読みにしてみましょう。ためらいがちに読んでみてもいいですね。
「だめだい。しっかりぶつんだよ。」
「もういい。はやくにげたまえ。」
小さな声でやりとりします。ここらへんはわちゃわちゃしていて、面白いシーンです。面白くやると、それだけラストの切なさが際立ちます。
赤おにのおかげで青おには逃げ出し、計画は大成功!
村人たちは赤おにをすっかり信用し、毎日のようにうちに遊びにくるようになります。人間の友達ができて、すこしもさびしいことはありません。
でも、あのお芝居から音信不通の青おにが気がかりで、赤おには、青おにのもとを訪れます。
青おにのうちの戸のきわに、赤おに宛の手紙が貼ってありました。
このまま、つきあいを続けたら赤おにが村人に疑われてしまうことを懸念し、自分は長い旅に出る、という別れの文でした。
読み聞かせのコツ⑥ラストはゆっくり…。
赤おには、だまって、それを読みました。
二ども三ども読みました。
戸に手をかけて顔をおしつけ、
しくしくと、なみだを流して泣きました。
それまでのほんわかさがスーッと消えます。
ラスト4行はゆっくりゆっくり、赤おにの気持ちに寄り添うように、締めましょう。
個人的感想
いかがでしたか?
わたしも子どものとき、
「で、青おにはいつか帰ってくるんだろうか?」
と、その後が気になってなんだかモヤモヤしてしまった覚えがあります。
オトナになって改めて掘り下げてみると、
「で、赤おには、結局しあわせだったのか?あのお芝居は、やって良かったのか?」
と、またモヤモヤします。
青おにの自己犠牲の精神、無償の愛…。いつの時代も胸を打つ作品ですね!
また、「ないた赤おに」は、長年にわたりたくさん出版されていますので、読み比べてみるのも楽しいですね!
ないた赤おに (大人になっても忘れたくないいもとようこ名作絵本) [ 浜田広介 ]
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